遠景/
妻咲邦香
この秋最初のセーターは
箪笥の匂いがまだ取れなくて
くすんだ色したカマキリが
通りの向こうをしきりに見てる
何をそんなに見ているの?
一緒に見るけどわからない
私もどうやら枯れてきた
夢見てたことが既に懐かしく
何をそんなに見てたのか
本当は知ってた筈なのに
弾けて飛んだ草の種
もう袖口にくっついて
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