父の思い出/りゅうさん
 
父はお爺さんだ

戦中戦後の食糧難を思い
グルメだなんだと聞くと胸が悪くなると書いていた
食べるものが無ければ何だって、何だって……と

父の母のお婆ちゃんは
それをいい文章だとほめていたが
僕はそうは思わない

作る人の手間とか
人への敬意がまるで
抜け落ちているんだ

そのくせ食事の用意ができたら
二階まで上がって行って
できましてでございます、お父様と
呼びに行ってやっと
うむ、と言って食べる

家父長制の名残

大体、今は戦中じゃない
食べるものはある
この種の人が生み出したのは
戦中の似姿だ

やり切れません
やらなくていいんじゃないかな
そうだね
そうだよぉ

こうして主婦の苦悩をも
知るに至ったのであった



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