眺める/
夏井椋也
ピントを甘くして
眉を和らげて
眺める
風ブレを気にしないで
意味を追い駆けないで
眺める
昨日までのわだかまりを
水鳥が曳いていく
明日からの気がかりが
湖畔の欅を越えていく
意識の可動域が広がって
芝生広場を一気に跨ぐ
感情の増幅率は均されて
秋の雲を静かに浮かべる
もう
どうでもいい
いろんなことが
どうでもよくなったら
レンズと言葉をリュックにしまって
また歩き出そう
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