The Inerasable/
静
「まだ私を抱いていて」
貴方の部屋に響いた声は
既に誰の声でも無くなっていた
ベッドの傍らのサングラスに映る
エンドロールが滲んで消えた
「貴方の傍にいたかった」
あの季節の幾つもの奇蹟は
跡形もなくその動力を喪っていった
玄関に残された腕時計が生み出す
確かな響きだけが私に遺った
「どうか幸せになって下さい」
受話器から流れた掠れた声は
流れる血の暖かさを語ってくれた
窓際に飾られた写真が未だに
孤独を溶かす焔を焼べてくれる
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