液体/夏井椋也
猫が液体なら
花は気体だ
空が固体なら
あなたは液体だ
あなたは卵を茹でながら
何処へ行こうか考える
アンドロメダは遠いけど
映画館ならすぐ行ける
あなたは景色で映画を選ぶ
そこに表現されている
川の流れや打ち寄せる波に紛れて
映画の一部となることを望む
中途半端な人体のわたしは
いつもあなたに流される
でも液体であるあなたの川底で
ローリングストーンになるのも悪くない
茹で上がった卵を頬張る
液体である猫はソファで水溜まり
気体である花は食卓に音符を置き
固体である空は窓に青く張り付いている
あなたの茹でた卵は
当然のことながら半熟だ
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