がらんどうの部屋の抜殻/ホロウ・シカエルボク
 
たらいつの間にか頭を下にして浮かんでいるのかもしれなかった。いや、そんな筈はない。二、三度足踏みをして、その不思議な呪縛を解いた。動いてしまえばこんなものはすべていつの日か無かったことになるだろう、それはわかっていたけれどまだ動くことが出来なかった。ここでこうして、一見止まっているかのような時間を眺めて居たかった。もちろん、そんなことをしてもなにひとつ元通りになることはないのだが。だけど、そう、わかっているからといって素直に動くだけではいろいろなものを見落としてしまうだろう。そんな欲望がほんの少し働き過ぎているだけなのだ、あえて納得するならばそんな理由が必要だった。でも、納得なんてどうでもよかった
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