がらんどうの部屋の抜殻/ホロウ・シカエルボク
 

結局のところ、残されたのはがらんどうの部屋のみだった。北に空いた窓から、曇りがちな今日の午後の光が遠慮がちに忍び込んでいるだけだった。気づかなかったけれど、午前中には少しの間雨が降ったらしい。窓から見える景色には、そんな痕跡は少しも残ってはいなかったけれど。しばらくの間、予定をすべて忘れてしまったみたいにその部屋の中で呆けていた、時折車や自転車が、ここがまだ現実の世界であることを教えるためだけに通り過ぎていた。窓の外では忙し気に巣を修繕する女郎蜘蛛が居るだけだった。何も考えずにそんなものを眺めていると、自分の身体が奇妙な浮遊感に包まれている気がした。突っ立っていただけだったけれど、もしかしたら
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