feelin' bad blues/中田満帆
 
がいっぽん河床へかげを落とすなか、
 疾走する光りと、
 失踪した人間とが語り合う
 ほんとうに大切な時間
 やがてなにも見えなくなるまでにどれだけのおもいをたずさえていけるか
 そっと帽子を脱いだ老人がおれの道標にでもなったかのようで、
 おれはなんとなく微苦笑して、そのままかれのあとを追う
 なんとあたらしい燻蒸、なんとあざやかな苦み
 それでもいつしかかれとははぐれ、
 なにもない三叉路にたどり着く
 木は枯れ、水もなく、
 たったひとつの空にさえ鳥もない
 どうしたものか、
 おれはつまづいて、
 そのまま身うごきがとれず、
 なにかを掴もうと手を伸ばす、
 そのときだった、おれはおれの手を握って、
 やがておれとともに澱のさらに奥へ、
 心の内奥へ、北のなかの北へ、
 足もともふたしかなまま歩きだして、
 黒い犬と混ざりあい、
 四つ足で国道を駈け抜けて、
 森のなかへと入っていったんだよ、
 さらにちがう悲しみの澱を求めてね。

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