極光/大覚アキラ
あらいぐまは
ひとりぼっちで北をめざしていました
背中のリュックサックには
リンゴがふたつと
はんぶん食べかけのバナナ
角砂糖が三個
角砂糖は四個ありましたが
波打ち際で洗ったら
あっというまに
溶けてなくなってしまいました
これは洗わないで食べることにしよう
あらいぐまはかたく心にちかいました
あらいぐまは
それほど頭が良くないので
自分がどこに向かっているのか
よくわかっていません
いちめんの星空の下
どこまでも続くまっしろな世界
氷の上を歩き続けてきた足のうらは
すっかり傷だらけで赤くはれあがり
もう痛みを感じることさえありませ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)