うすむらさきいろ/大覚アキラ
夜明け前のベランダからきみが飛ばした紙飛行機が
雨の匂いのする湿った風に乗って海辺までたどりついて
疲れた顔で煙草をふかす港湾作業員の肩に着陸した
薄紫色の空気を震わせるパナマ船籍のタンカーの汽笛は
眠りに落ちていくきみのベッドまでは届かない
そうやって世界は繋がっているようで切り離されている
夢の中できみは港湾作業員と並んで岸壁に座り
彼の唇から奪った煙草をくわえて薄紫色の煙を吸い込んだ
空と同じ色の煙が湿った風にかき消されていく
ボラードで羽を休めるカモメが不満げに短く鳴いて
彼ときみはそれを見て意味もなく微笑みあった
そうやって世界は切り離されているようで繋がっている
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