月下美人/ミナト 螢
 
君の声が僕に届く
受話器を少し曇らさせて
その空気を庇った

時間がないような気がして
一度に沢山のことを
話したくなる

僕らはまだ
何も知らないはずなのに
どうして同じ方向を
見ているの

目印さえ
決まらない世界で
ひとりになると
包まれてしまう

隠し切れない不安が
誰かを傷つける前に
君に会えて良かった

ずっとひとりで
生きて来た証は
頑張りすぎて
嫌われてしまうから

その頑なに
結んだリボンに
君が息を吹いて
花びらに変えた
戻る   Point(4)