「0」を探す/夏井椋也
 

「0」を探す旅は続く

一昨日も今日も
おそらく明後日も

「0」は見つけづらい上に
なかなか手に入らない

排水溝の鉄格子に引っかかっていたり
街路樹の枝先で揺れていたり
さよならしたあなたの靴底に貼りついていたり
うっかり溜息で吹き飛ばしてしまったり

見つけたと思った瞬間に
「0」は跡形もなく消えてしまう

仕方がないので
アトレで買った「1」のレプリカで「2」をつくる
絵画館前で拾った「1」のレプリカで「2」をつくり続ける

せっかくつくったのだからと
「2」を本物の「1」と偽って見せびらかしたりするが
そんなものは「1」でも「2」でもなく
ただの「3」だと嗤われる始末

「0」を探す旅は続く

もし「0」が手に入ったら
わたしはもう「2」をつくらないだろう

もし「0」から本物の「1」をつくることができたら
「0」を探す旅の呪いは解けるのだろう

おそらく
おそらく



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