坂/夏井椋也
坂を下りながら考える
答えの出せないあれこれ
ぼんやりと迫りくる YES/NO
一歩ずつせり上がる街
視界の隅に追いやられる空
さざめきが耳たぶを染める頃
わたしは街に均されている
坂を上りながら考える
答えは出さなかったあれこれ
なんとか逃げ延びた YES/NO
いつまでも打ち寄せる街
視界の縁から降りてくる空
安堵と後悔が絡まるドアを開けて
わたしはそそくさと家の一部になる
父親は高い所に住みたがった
そして大の引っ越し好きだった
わたしはいろいろな坂の
それぞれの傾斜角に促されて
とりとめもなく考えてしまうのだった
わたしの悪癖は今でも治らない
相変わらず坂を下って上って考えるが
導かれる答えはいつだって
極めてYES寄りのNOもしくは
限りなくNOに近いYESだ
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