夏/あらい
 
いると比較され
加工して冷蔵庫に生かしている、味覚はとうに噛み殺され
満干の箱庭でぬるま湯に浸かるだけで 苦し紛れて、
月光を掬った
いつかの僕が織り込んだ騙し船が 
どうしてか自分を乗り込ませ
筆箱の隅から泳ぎ出した時に、時代は変わったのでしょうか
夢も希望もない、
簡単に棄てられる絵空事を乗り越えているようで
夥しい埃で形作っただけの ひとがたと、あいまみえる。
己の身を振り返るだけの、
輪郭を帯び脅かすだけの、線香花火
さざなみもくそもなく、およぎきれず
ふらふらと煌けるだけの星屑
今の君と出会った、常夜灯のシグナル。
そのもとで、かどで
われら、なんでもない
[次のページ]
戻る   Point(2)