角膜潤色/あらい
夜の旅館の長い廊下と 桜並木と襖とが頑な
密談の風が颯爽と盥に落ちる 濃淡を強いている
瞬きより眦より 薄く開かれる 胡蝶尾鰭
二日月夜と受粉を繰り返した
うまくとだえるのを「待って。」しじまにあるふらつきが
すすけ橙のわたしと感じさせ 注意もせずに行き当たる
ドクダミの園を荒らす獣人達もまた
骨ばかりのながい龍と抜け落ちていく
この木漏れ日のおしゃべりなこと
トビエイの翼を翻して 素肌に海を授けた
「あちらへ、」と紫雲。もうかわいて きこえてきて
言われてみれば やさしく ほほえみました
雨の匂いがする――黒蝶真珠のヒトも
ぽつぽつと舌っ足らずの――コットンレースの女も
夕焼けに嫌われても 飽きることなくふりはじめたので
頬の痩けたブロンズ像は、決して
寂び従いてはいないけれども
嘯き増して
変わったアクアリウムの中にもう、いるから
どうしたって瞳がこちらを遭わせない
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