半可通の蛭/あらい
 
胸間からとおくとおく、袍の指先まで
崩れかけた山肌をなぞっているのでしょう
その眦など、乾いては渇いては
照り返したその頬の、なんともはや
かがりくるう、つむじあたりに、かえして
つぶらのかおりを求めています
ひずみにあたえたいがみが、タンコブだろう
その鼻先を、櫛で透して、ものにして
いるあたりに、またほおきつけ、ぬりなわせ
それでそれで 途端に泣き出したものだから

わっと散ってもう見えなくなる
火葬のあとは、どうしたって
口をつぐむ。
手を引いては、ぐっと抑えたから

岩盤まであとすこしだから
たぶん 運に噛ませた 泥沼につんのめる
あたりが甲斐甲斐しく 朝を圧えて

馬鹿正直にも
『うでを振り上げて、かおを背けて、
 あしを運んだあとに
 その跡に、
 あなたはその瞳でなにを〈しめす〉のか』

乏しいのだよと、首を傾げる。
その化粧こそ【半可通の蛭】

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