夜陰/あらい
蒸発すら叶わない人魚の
鱗のようにある
湖が
荒々しい海辺の
あの夏の終わりの、
へたくそな絵を描いて
ただ鏡越しに私の真似をしている
異国のおんなが
白い蝋燭をひとつ灯して
のぼせるようなすがたで
中空を漂っていた。
意識はそこから
黒い影をくねらせ、
走り去る前の地下鉄の香りが、
こちらをじっと見てるような
芯のひとつだけ芽を出し
パッケージングされた
死に化粧の口づけに
瑞瑞しい素肌を咲くと
それは消化されるまでの
白波だけが
音を反射させ 岩礁に叩きつけられ、
死んだはずの異体が、目をしばたたく
寒々しく凍っている、
うっすらと見えるこのひかりが、
なくなってしまったよに、擬態して処る
戻る 編 削 Point(1)