夜陰/あらい
 
蒸発すら叶わない人魚の
鱗のようにある
湖が 
荒々しい海辺の
あの夏の終わりの、
へたくそな絵を描いて
ただ鏡越しに私の真似をしている

異国のおんなが
白い蝋燭をひとつ灯して
のぼせるようなすがたで
中空を漂っていた。

意識はそこから
黒い影をくねらせ、
走り去る前の地下鉄の香りが、
こちらをじっと見てるような
芯のひとつだけ芽を出し
パッケージングされた
死に化粧の口づけに
瑞瑞しい素肌を咲くと

それは消化されるまでの
白波だけが
音を反射させ 岩礁に叩きつけられ、
死んだはずの異体が、目をしばたたく

寒々しく凍っている、
うっすらと見えるこのひかりが、
なくなってしまったよに、擬態して処る
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