FLOWER COMES FROM NOTHING./竜門勇気
 

それだけの違いしかない
昔話をどうやってするのか忘れてる
何を思い出しちゃいけないのか
何を喜んでいいのか忘れてる

あんたはいつも
酔っ払ってるし
でなきゃ寝てる
シラフで最後に
交わした言葉が
「あとふたつ、それでおわり。」

痩せた犬はぼやけた唾を
ヤニ垂れたガラスに飛ばす
ガリガリと伸び切った爪が宙を掻く
煮立った薬缶の中で
ベトベトした何かがあぶくをたてて
目に見えない不吉を
換気扇に流し込んでいる

俺はいつも
酔っ払ってるか
何か気に食わないものを
床に叩きつけているだけ
めちゃくちゃになった家を
引き裂こうと喚くあいつだけが
まともなんだ

あとふたつ、それでおわり。
夏が来てその後はなにもない
ナッシング・カム・フロム・ナッシング
そして無でないものだって
何も産まないこともある
悲鳴が聞こえない靴箱
みんな耳を澄ましてる
どこかへ出かけようなんて
そんな気分をぶっ壊してやるよ


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