常磐未来/あらい
 
いるのだから、仕方がない。
 そんな日が塵積りあるということ。
 不快な透明感に投影された自らの寂寥感を泥沼の藍色、波間に流したばかりである。
 笛の音めいたフェリーが遠くに着岸し、闇の底へいくつかの灯りが放たれる。
 円ゐに墨を亘したような月のない夜こそ星星が耀き、ほそぼそとしたいのちの、夢や希望を募らせ膨らみ過ぎた野心が風にのり、にわかに、わらいごえに沈着する、たとえ凍える魂に少しばかり残された、夜光虫がまた啜り泣き、そのような波音がざわめきが銃声が手拍子でかき消される。

『久世 要』は不機嫌である。
 びんと跳ね起きたあとで眼下に開けた美景が気まぐれにも日暮れであったとして、
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