完備 第二詩集『mirage』/完備 ver.2
 
するとき
たとえば、きみの
「霊の苦み」なんていう
大げさなレトリックや
詩を書かなくなって長い、彼の
論文に残るかすかな 痕跡

ひかり、という言葉を
胸のうらで繰り返す
詩の跡を探して
誰かの名前みたいに
ひかり、と
ひらがなで書く
たとえば、彼に貰った積分を
計算しているノートの
まんなかに、
かたすみに、
あるいは夢のなかで立つ
波打ち際に何度も





++ SONGS +++++++++

切って貼ってハートの箱にリボンしてこれはあなたのための比喩だよ

マフラーをむりやり巻いてくれそしてまばゆい駅まで手を引いてくれ

きみのからだを傾けるとき水こぼれ、これは比喩ではない不等式

けだものの名残る瞳で吾を抱くきみの筆跡なぜうつくしい

殴られるのが好き殴り返すのも夜の線路をむりやり越える


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