すこしだけ、なみかぜ。/あらい
黒い闇に輪郭を落とした、実、物音一つなく
幽寂の太陽が、結末に遺したものが、ここに
終宵を宿し照らし続けている今 手元だけを
疾走らせる風の 少しの私の姿を囚えている。
筆跡は乱れ然し、轍一つもなく、痣の波紋が
はためく刺し口をも、偲ばせる張りぼての表(おもて)
澱を隠した山肌に途絶え月面に苦悶の意図が
闇の中にある ケロイドの私。刹那の足元に
じゃれつく蛹化(ようか)、細い蝋燭の炎と、薄く笑む
鳴り響く印象として平面描写。人波であれば
奇想の拝礼と射抜くこのところ/あればまた
発酵した白壁は忌まわしく平凡な隙間を埋め
抜け道を塞いだのかと。消えそうな記憶を今
正しい姿に戻すときに地べたに在る翳のこと
水鏡よ、私は、私自身を認識せざるを得ない。
2023/04/29 (お題 面影)
戻る 編 削 Point(1)