四方山話/あらい
 
卓だった、

ほら 自らの姿と 己の瞳で 然とご覧なさいよ

ギザ歯、曲がった鼻、ボサボサの眉、可愛た瞳、長い耳、
ミンククジラの卦皮、間柄から。指の愛だから、
指し示した砂の上で。海の藻屑のうたが、
私達の関係を湿している、
まだあたたかい12月のカレンダーの色あせたこと。

もうすこしだけ藤を吸う風が――
「冷たいかな、」(いまでも。)「そうだな、」

回廊を曲がる少し手前に、さつきが咲き誇っていたのです
桜の葉がざわざわと 髪をはたいていきました
生まれたばかりの蜘蛛の巣を払い除け
そのくせ
ちいさな雲が沸き立つのを それとなく もじったりしてね。

この錠前の閂はもとから緩んでいたと聞きました
この鍵穴はなにかが巣食っていたところです
ではヘアピンで拗られた穴のそこは
いやに癖のある花のなかは
夢の
或る
星界が
こうして押し開かれているという、夜な夜な 四方山話だ

2023/04/28
戻る   Point(3)