見送る夏/白書易
 
そこにいたようにしているのかもしれない気がしてきたころに
山の向うに大きな木を見た。ふかふかした地面を踏んで、日向ぼっこをして、
私がずっと怖がってきていたこと。

***

迷路の入り口が多すぎて誰かの入り口が出口になっていることだってあるんだよ。
だれもが救われる可能性ならどこかにあるはずと迷いながら絡まる糸に足が引っかかって転んだ。
私は誰かの逆戻りをして自分を確かめようとでもしているんだろうか。
これは日記で続きがある、

糸を紡げるようになりたかった。ひつじの生れ方を知らなかった。ひつじのことも、
パンを焼けるようになりたかった。土のことを知らなかった。種のことも
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