桜憎/坂本瞳子
 
枝垂れる桜のそれは
たおやかに美しく
雨粒の重みに抗うことができず
うなだれているかのようで
助けてやろうと手を差し伸べることなく
あともう少しこのまま見ていようと
自らの心に潜むマゾヒズムのようなそれを
覚えては掻き消そうと
雨よ流し拭ってくれたまえと
狡猾な考えが浮かぶに及んでは
なにもかもに嫌気が差し
桜そのものに憎しみを覚えたりけり
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