読むことのスリル──ひだかたけし小論(9)/朧月夜
 
る、神林長平はこう言いました。「人の社会とは、言葉というヴァーチャルなものを媒介にしている以上、ヴァーチャルなものである」と。これも、正確な引用ではありません。「言壺」という作品のなかにある、何らかの言辞を要約したものでしょうか?(ここに、わたしは評家としての不徹底を思うのですが……) 「言葉」「ヴァーチャル」──文学を目指す人であれば、同一の次元には存在させたくないような言辞でしょう。
「人は何をもって詩を書くのか?」……これは、詩人にとっては根源的な問いです。こうした絶望的な問いに対面することを拒んだ詩人は、詩人たるを得ません。ひだかたけしという詩人が、そうした「三文詩人」でないことは、この
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