読むことのスリル──ひだかたけし小論(7)/朧月夜
ここに現れているのは、叙景です。詩を読み進めると分かるのですが、第四連において「三歳の私は」と記されているように、これは詩人にとって過去の情景の描写となっています。詩人がいかなる幼少時代を送ったのか、わたしは存じませんが、この詩では、工場のような場所における詩人の「戦慄」が表されています。ですが、叙景はこの詩のなかでは、持続しません。第五連において、次のような抒情が現れます。
私は
自分の存在が
ナニカに気付かれてしまうこと
そのことにただひたすら怯えている
これは、この詩における結論の先取りです。最終二連で、作者は次のように言います。
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(3)