読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
 
して見られる、「主観」と「世界観」とのせめぎあいが見られます。氏は、これを「哲学」ではなく、「直観」であると言うのですが……ここで、「哲学」と「非哲学」、または「哲学」と「文学」との境について云々することは無意味でしょう。この論の初めから主張しているように、氏の作品はまぎれもなく「文学」であるからです。では、「文学」とは何ぞや?
 文学の歴史は、詩歌の歴史から始まったと言っても過言ではありません。人は、覚えにくい神への賛歌を暗唱するために、詩歌というものを発明しました。詩歌とは、その本来においては、暗唱されるもの、覚えられるもの、としての性格が濃かったのです。ですが、近代に入り、詩歌は定型や韻を
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