読むことのスリル──ひだかたけし小論(3)/朧月夜
 
のです。これは、宿命と言っても良い、氏の詩が作者自身に対してもたらす十字架だと言えます。
 わたしは今、氏の詩をあらためて読み進めているのですが、なかなかその「世俗性」に至る鍵を求められないでいます。難解な語彙、独特のレトリックが、それを阻むためです。氏の詩が英訳されたら、あるいはもっと読みやすくなるのでは? とも思うのです。西洋圏の詩は、いわば抽象のなかでこそ生きるものです。隠喩も日本よりも盛んですし、哲学的な表現も音韻によって分かりやすいものとなっています。この詩人の詩がもしも西洋に紹介されたら……あるいは、ポピュラーな(世俗的な)詩にもなり得るのではないでしょうか。しかし、そんな期待と希望
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