読むことのスリル──ひだかたけし小論(1)/朧月夜
この序文に「時間について」などという副題を付けたのも、わたしが未だこの詩人の著作、あるいは詩人自身に対する批評の姿勢が整っていないためです。つまり、わたしはひだかたけし氏の詩を正面から読む準備が出来ていない──と。このことは、評者としてのわたしの姿勢を否定するものでしょうか? いいえ、そうは思いません。人は、卓越した創作を目にする時、真には、沈黙を持ってしかそれと対峙しえないものです。すなわち、真の芸術は人を沈黙させる力を持っているのです。「これを前にして、何をか言わんや」です。
人を沈黙させる芸術としては、例えばロダンの彫刻などを思い浮かべることができます。「考える人」という一個の彫刻を
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