digital twilight haru/mizunomadoka
 

「ごちそうさま」
そう言って席を立つ
「ねえ、明日」
声は喉の奥に消える

触れる月は手を溶かす
美しい通路
これから起こる悲劇を知らない

反射と再合成された
細やかな現実

本物の世界があるのに
見えたものはそこにない

落ちた言葉を拾い上げ
食器を重ねる

時間と空間の隙間に
生きることを許された
渡し

泡はどこからでも浮き
水はどちらへも流れる

ファミリーレストランのキッチンで
あなたがこの世界を去ったことを知る

春を待つ

摂氏百度の
氷点下二百度の桜






戻る   Point(2)