憧れの瀉血/坂本瞳子
 
瀉血に対する憧れは
その響きと
書くには難しそうな漢字と
血の生臭い鮮やかさが
感じられるからであろうか

一昔前の浪漫さえも感じられ
心のもっと奥の方から
じわじわと地味に沸き立つようなものが
蓄積されて欲求の塊と化し
押し寄せてくる予感さえ
夢見心地が誘われ

注射針の鋭利さと
白衣の清潔さが混じり
鮮血が重なる絵が見える

軽い貧血を伴って
気が遠のいていく感覚
目眩さえも引き起こされそうな
あともう少しで気を失ってしまえそうな
弱々しく
虚弱を体現するかのごとくに弱々しく
赤い血を見て頬を高揚させて
気が安らいでいく
そんな瞬間を
夢に見て憧れをまた募らせている
そんな気がする
戻る   Point(6)