牢記/あらい
今日を通り過ぎゆくひとびとを 意味もなく折り曲げ
小道に広がる落ち葉を拾って帰る 死相が耳朶を覆うという
――だれもいないところへ
メタルフレームの一角から、寂しそうなカラダが、だな
私以上の博識で、疑問を解いて、どこかいってしまう兆しだ
ぬるめに下げられたゲストハウスの 非科学的冷暗室にいる
標本たちは深夜もかわるがわる うめきひしめき天に泣く
へたり込んだ遺り蛾を口に含む、呼気より甘く喘鳴より微温く。
シャーレに展開する煙霧質の牢記を、宝石と図りてみること
黴びた氷が、花を帯びるように、溶け出し詠んでいること
斜め向かい側の筋交いが小首を傾げている気がする
何重にも敷かれた KEEP OUTの プラットホームを
吹きさらしにおけるモノクロークが 時計の針を停め
遠い国のはなしが 数式を連れて なにげなく現れるのを
何本目かの烟草をもみ消して なかったことにする
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