なにかを考えるとき、もう時計に目をやることはないだろう/ホロウ・シカエルボク
 

聞いた話によるとそこはもう数十年も前から打ち捨てられた廃屋ということだった、縁がすっかり落ちてしまった扉はしばらくぶりに開かれた重みに耐えきれず落ちてしまった、おかげで危うく怪我をしてしまうところだった、失われた街の一角で動けなくなろうものなら、誰にも見つけてもらえるわけもなく、あっという間に街に飲み込まれてしまうだろう、がらんとした聖堂には高い窓から日が差し込み、ヘヴィ・メタルのジャケットのような大仰な静謐を演出していた、耳をすませば今でも真面目くさった聖歌が聞こえてきそうだった、と言っても、たくさん並んでいる椅子はどれも、とても座りたいと思えるような状態ではなかったけれど…すべてが火山灰で
[次のページ]
戻る   Point(2)