おそらく業務用として卸されるホテルのシャンプー/万願寺
べての集中線は父親へ向かう、あるいはすべての消失点は
そこへ
憎しみの指向性、散らばってしまったそれを黒点に集めて、また散らそうとは思わない 他のものを憎みたくないから
だからずっと何をどうしても憎むために憎む
その先で逃げてきた大浴場でたくさんの「わたし」を造った記憶を嗅ぐ
自由だ
いま、憎しみから自由、理科の時間に北校舎の裏庭の乾いた花壇に植わるクロッカスの葉を見ながら、すいこんだつらい五月の空気、新緑新芽
あのときも父親はいたが、あのときは憎んでいなかった
しかしそんな事とはもはや関係がなく私の今はヘイトタンクから飛び散った黒インクにまみれ
だけれど自由 思い出を思い出し 私は自由
ここには父親もいないし、ただ水上の温泉に連れていってもらったあの時の大浴場のにおいさえ
思い出せそう
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