人間ではない。/岡部淳太郎
 
ろう舞台に立つという経験ゆえに味わえるもの、それに魅せられているからこその台詞であることは間違いない。推奨された世間的な幸福を享受するのではなく、大して金が稼げるわけでもない、しかしそれゆえにか逆に普通の人間では味わうことがない特別なものを持ちうることの方を選ぶ。詩人というものも、これと似たようなところがありはしないだろうか。その劇の中でも登場人物たちが自分はなぜこんなことをしているのかと疑問を持ちながらも役者として舞台に立つことを肯定的に捉えているが、詩を書くという行為もそうで、詩で金を儲けるなど覚束ないし、大して人や社会の役に立つとも思えない、いわば実務的ではない行為であり、そんなことをそれで
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