日付の無い日記/夏、転校生/ちぇりこ。
・チューリップ模様の宇宙船に乗って
あの娘はやってきた
ぼくたちとは違う匂いがした
・はじめまして
あの娘はクラスの女子たちと握手をする
女子たちの手のひらから
チューリップが生えてきた
やっぱりぼくたちとは違う匂いがした
・あの娘が転校してきて以来
クラスは異国の港街みたいになった
様々な言語が水揚げされ
見たことの無い市が立つ
・夏服になる季節
あの娘の匂いは薄まるどころか
日増しに濃くなってくる
白い指さき大きな黒い瞳
日に透けると琥珀のような髪の毛
戸惑う、を覚えたての
ぼくたちは
・夏休みの体育館は
水の無い惑星に不時着した
宇宙
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