ともがら/万願寺
せるつもりのないあなたはいつも通りです。
さようなら。
言うつもりは無いのにむねをついて出ることば。
さようなら、さようなら。永遠の存在にあなたはなる。
そんなことは全く嬉しくないけれど、私たちの出逢いは、もう閉じることはできなくなってしまったよ。私は永遠にあなたに向かってひらき続ける。ずっとずっと呼んで、語り続け、あなたはもういないのに、背中が見えるだけなのに、あなたに名前を呼ばれた日のことを憶い出しながら、これでどうだ、これでどうですか、これでいいんですよね。そう言い続ける。あなたにはもう何も言えないのに、私は喋り続ける。
向かってゆく。ずっとどこかに。
おめでたい音楽を盾と矛として、携えて、あなたは恐い足音を立てて、往く。
剛健な存在だった。それでいてふにゃふにゃしていた。おもしろかった。おもしろかった日々。
それを振り切ってあなたはひとりゆく。
それがあなたの、本身。本性。ざっざと軍靴のごとき音でもって世界を渡ってゆくの。ゆくのですね。それをみんな知っていますよ。
だからあなたに無数の花が向けられています。いま、あらゆる各所から。
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