エインスベルの逡巡(二)/朧月夜
「いや、戦争ならばまだ良い。いつの時代にあっても、
人と人との争いは絶えなかった。今はそれが問題ではない。
ヨランが知らせてくれたのだ。この壮大な戦いの後ろに、
エランドル・エゴリスが構えていると……」と、エインスベル。
「そのエランドルとは、何者だ?」エイソスが尋ねる。
「この世の神、いや、悪魔だろうか……。
エランドルは、三千年前から生きている。そんな存在だ」
「そんな者がこの世にいるのか?」エイソスは驚いて言った。
「この世、とは言えないのかも知れない。エランドルは幽冥界に住んでいる」
「この世の異界のことか?」──「そうだ」
「事は厄介なようだな。この世界にすら、数々の異種族が住んでいる。しかも異界とは……」
エイソスは続ける。「幽冥界から数々の魔物が現れたら、
それはこの世の終わりということだ。違うか?」
「違わない。この世界は混乱に晒され、やがては滅びる」エインスベルは嘆息する。
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