終戦記念日/ホロウ・シカエルボク
 

わたしは古めかしい歩兵銃を抱えて焼け野原に立っていた。敵と味方の死骸がアザラシのようにそこらに転がって膨らんでおり、鼻腔の奥や喉に針金を突っ込まれて掻き回されているかのような猛烈な臭いが漂っていた。夜のようだった。けれどもしかしたらなんらかの理由で太陽が隠されてそんな様相を作り出しているのかもしれない―たとえば爆炎なんかで。どちらにしてもそこに居るわたしには正確な判断は出来なかった。この上なく疲弊して、怒りと哀しみが混濁した奇妙なカタルシスのある感情が胸中で暴れるのを感じながらただ立ち尽くしているだけだった。どれだけそうしていたのだろうか。ふとなにかしら、小さな音を聞いたような気がして数度、辺
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