カーニバル/山犬切
夏の盛りの訪れに木製の扉が開かれ、庭は一面青い草や花々でうっそうとする むせかえるような夏の草の匂いがして女は如雨露でマリーゴールドや向日葵に水をやっている 軋轢都市の水位は上がり、樹で蜜を吸うように一生懸命鳴いている蝉たちが高まった水位に溺れている 水に浸かった都市を半分以上水でできている僕らは歩く
リビングのテーブルの上のコップ 夏に飲む冷水は爆発している
家で冷たいそばを食べ終えプレステ2の昔の格闘ゲームを俯せに寝転びながら漫然とやっている齋藤さんは僕と恋仲にある 僕は唐突に彼女を外へ連れ出したくなったので 「今日――祭りがやっているよ」と俯せの彼女に声をかけた 斎藤さんは顔だけをこ
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