小詩集・波/岡部淳太郎
 
波 1

寄せてくる
返ってゆく

そのはざまにすべてがあって
あるいは
そこに何も見つけられなくて

寄せてくる
返ってゆく

その現象だけが
いちまいの絵のように
無言で眺められていて



波 2

ここにあり
あそこにもある
やがて洗われる足下にも
海の向こうで
心臓の鼓動のようにその律動の
みなもとにもある

また ここにはなく
そこにもない
離れたあらゆる場所に
同時にあって
またないもの

ありながら
ない という
その不可思議さのなかにこそあるもの



波 3

{引用=どうにか届こうと
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