昔の音/服部 剛
スマホのやり過ぎで
疲れ、腹も減り
近所の和菓子屋へ
おむすびを買いにいった
店の奥に主人の大きな背中が見え
古い機械が
ぎったん、ばったん、餅をつき
合い間に主人が、手でこねる
――あれ、いいですね
――ええ・・・旧式なもので
初老の奥さんは
小声で言った
(辺りの空気は昭和であった)
「お茶乃友」と印刷された
紙袋に包まれた
おむすびの温度を、手に
歩き出す
電波にまみれた僕の脳裏に
ぎったん、ばったん
餅をつく音が
いつまでも繰り返されている
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