いままで亡くなったひとびとの すべての墓に供えるには 花が足りない/
凍湖(とおこ)
いままで亡くなったひとびとの
すべての墓に供えるには
花が足りない
そのことをかなしむこともできないほど
墓標は増えつづけている
忘れられた
記されなかった
記憶のなかに
わたしと似ているようで違う
ありし日の誰か
あなたの飲み込んだ苦悩が
まだ
善良なひとびとの無邪気さのなかで
行き場をなくし
小さな竜巻のようないたみが
残響している
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