きれいなものたちへ/由比良 倖
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今年もまた、私はこの椅子に坐って、紙縒りのように詩を書いている。
緑色の、温度の無い砂漠の中を、両腕で飛ぶようにして。
優しい私。 ちっぽけな私。 私は私に纏わるもので出来ていて、
私は私に冷たい。
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あなたは料理をする夢を見る。食卓には色がある。
目が覚めると色はぼんやりとしていて、まるで音みたい。
その音について教えて。
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脳の中は緻密な街。そこに一本の、とても鋭くて細い、
針が立っていて、その針だけが私の見る、外界に触れている。
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自分の足で歩いていた。 私は河を歩いていた。
とびきり可愛いイギリスのパーカーを着ていた私は、そこでは病気で、
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