さやか/星染
あの海は、君のひとつひとつの発声を、すべて写し取るために波打っているのかもしれないね。不規則なようで規則的な潮騒は、心臓の拍動のリズム 月の盈ち虧けにあわせているのは、わたしたちのほうだったのかもしれないと 有名な詩を君が諳んじるのを、黙って録っている
たとえばいつか、この散々な暮らしがすべて破壊されたとして、余すところなく穏やかな日々の中を、草むらの中をかき分けて進むようにして、お前と歩けたら、 ……君の歌がただしく暗記されているのかどうかを、わたしは確かめることができない。ざざあ、ざざ、ざ、何年か前にも、同じような光を見たね。ここは、とても静かで、夜から朝にかわるときの空気の澄み方に良く
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