にせもの/やまうちあつし
 
なつかしい感じの家を見かけたので
インターフォンを押してみた
現れたのは見たことある顔
なんだ、わたしじゃないか
あちらはあちらで驚いたよう
とりあえずどうぞ、と
室内へ招かれた
リビングでは思い出話に花が咲く
寸分も違わぬ記憶
厄介なのは
いちいち感想が違うこと
嬉しかったと言うと
悲しかったと呟く
せいせいしたと話すと
未練たっぷりの様子
あまりに平行線なので
リビングは険悪な雰囲気
ちょうどそのとき
電話の着信がある
わたしのスマホと
あちらのイエデン
どうぞご遠慮なく、と
それぞれ同時に応答する
「いかにも
 わたしは
 わたしの
 にせもの」

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