取り戻すこと/
静
山際篝ゆく暮照の中で
導かれるままに歩を進めた
街外れのトンネルを抜けて
三叉路の行き先など迷う筈無く
誰の為でもなく光を浴びる
いつの間にか頬を涙が伝う
何も得ぬこの時間が素晴らしすぎて
永く伸びた影も微笑んでいる
日暮が鳴き止んだ頃に
涙跡の微かな塩を拭う
初めて己の為だけに歩く
その奇跡を噛み締めながら
今度こそこの夜を越えて
私は貌を取り戻すのだろう
心が涙を取り戻すのだろう
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