ノート/十一月/ちぇりこ。
それから
わたしたちは
小さな書物になりました
耳を閉じて
陽の当たらない書庫に
丁寧に並べられて
呼ばれない名前を付けられ
秋が去るのを知りません
鳥たちは渡っていったのか
薔薇の花は枯れたのか
お互いの一行を
読み解くこと無く
並べられているのです
白い鱗粉が風に混じり
白い塔が建築されました
あれは
冬の比喩だということを
知っています
静けさという火種は
白く燃え広がる
次の朝には
崩壊する建築群です
頁を捲られる毎に
崩壊してゆく文字列の
背表紙だけが気がかりです
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