だいこん 蜃気楼/soft_machine
 
だいこんの葉が溶けていた
週末が終わって残数五
こころがふたつ同時に
形を持つということが
同じ風を感じ
同じ雪を見ている

糖化するこの壁より深く
肉体へ蘇るだいこんの葉は
わたしの鳥には勝てない
何故なら飛べない
ひっそりと
点滅していればいい
ネオンはどこかちぐはぐ

また昏い井戸の奥に住んで
見上げられたら空は
電子のにおい
庭を狂わす嵐

ごまめの愛読書は
賢治の詩篇と決まっているから

海市だよ
海市だね
ピラミッド
それから氷山
愛してるなんて言えないし
それで浮かぶ
足もとから溶けて

嫌いなものが減るかわり
哀しいこともおし寄せる
好きなでいっぱいの空は
たまごとマヨネーズ
フライパンの欠け

自転車こいで
こいで溶ける
溶けてあわ立つ
花弁がひらく水面へと

魚が水をのむ
わたしも誰かにのまれる



戻る   Point(1)