アイソニアの騎士とエランドル(十二)/朧月夜
「ずいぶんと高飛車に出たではないか。『エインスベルを救え』とは?
人にものを頼むのであれば、まずは膝を屈するべきであろう。
ましてや命令など……。俺は、アースランテの千人隊長だ!」
「頼んでいるのでも、命じているのでもない」
「では何だ?」アイソニアの騎士は、エランドルを睨みつける。
「これは、ひとつの助言だ。エインスベル、いやククリス一人を救うためであれば、
わたしは、とうにそれをなしている。お前たちの手は煩わせない。
いや……それも違うな。騎士よ、お前にとってエインスベルとは何か?」
「戦友だ。そして、最愛の人でもあった。今は違うが……」
「違うのだな? よく言った。しかし、ククリスは我にとって最愛の者である。
未だにな。このような世界になっても、わたしは彼女を愛している」
「エインスベルは、そのククリスとやらではない! とっとと魔法石を寄こせ!」
「まあ、慌てるな。騎士よ。虹の魔法石はくれてやろう。だが……」
その時、地揺れのようなものが起こった。三人のいる建物を、突風が襲う。
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